試験問題の奥に潜む人類の問題

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2017センター試験化学第2問共通テストの化学に、アンモニア合成に関係している問題
が2つありました。ひとつは、問2-1、アンモニアの結合
エネルギーに関する問題。結合エネルギーの問題では、
すぐに熱化学方程式に直しておくと、計算が早くなります。
N-Hの結合エネルギーをa(kJ)とすると、
2H = H 2+436kJ、2N = N 2+945kJ、
3H+N = NH 3+3a kJ なので、
これらを、問題に書かれている式に代入すると、
3/2 (2H-436) + 1/2 (2N-945) = (3H+N)-3a+46
3a =3/2 ×436 + 1/2 ×945 +46 ∴3a =2345/2
2017センター試験化学第3問この問題では、1molのアンモニアにあるN-H結合を「すべて」切断する
のに必要なエネルギーを答えよということなので、この3aが答えになり
ます(この場合、aが答えではない!)。
問3-2には、アンモニアの工業的合成について、正誤を問う記述があります。
②には、「アンモニアが常圧で工業的に製造される」と書かれていますが、
アンモニアは常圧では合成できません。高温・高圧の条件でなければ合成
できないのです。よって、これは間違いなので、これが答え。
この問題のなかで、迷いやすいのは⑤ではないでしょうか?
結論を言うと、ガソリン車の排ガス(炭化水素、アルデヒド類、一酸化炭素、
窒素酸化物など)は、三元触媒(ロジウム、パラジウム、白金)により、
炭化水素やアルデヒド類などは酸化されて二酸化炭素と水になる一方で、
窒素酸化物は還元されて窒素になるのです。ディーゼル車の場合、排ガス
に酸素が残っているため、この還元反応は起きません。したがって、ディー
                           ゼル車に三元触媒は利用できません。VW社排出ガス不正問題を覚えてますか?
答え合わせをするだけでなく、このように過去問(まだ2日しかたってませんが)を深く研究して
みることは、類似の問題への対応に役に立つものと思われます。アンモニアについて調べてみると
なかなかこれが奥深い!アンモニアの生成熱は正(生成エンタルピー変化ΔHが負)なので、水素
と窒素からアンモニアが生成する反応は発熱反応です。よって(正確にはアンモニアの生成ギブズ
エネルギー変化ΔGが負だから)、この反応は自発的に進む・・・ということには現実はならない。
活性化エネルギーなぜなら、この反応の活性化エネルギーが非常に高い
からです。生成熱は物質がどのような経路で生成された
かに依存しない一方、その反応は起きるかどうかは、
物質がどのような経路で生成されたかに大いに依存する
のです。適切な触媒を用いれば、活性化エネルギーを
下げることができます。アンモニアの工業的合成の場合
は鉄触媒が用いられますが、それでも高温・高圧でなけ
ればならないため、大きなエネルギーロスが生じます。
アンモニアは人類にとって、とても重要な化合物です。植物の育成を促進させるためには、窒素を
補ってあげる必要がありますが、アンモニア態窒素は土壌に吸収・保持されやすいので肥効が高い
といわれています。発展途上国で食糧生産を増やすために、安価な窒素肥料が必要とされているの
です。一方、日本では、海外から水素を運ぶときのエネルギーキャリアとして期待されています。
しかし、アンモニアの合成では、とても多くのエネルギーが消費されてしまうため、製造コスト
がかかりすぎるのです。いつの日か、ハーバー・ボッシュ法に替わる省エネの工業的アンモニア
合成法が生まれるのでしょうか?これは、誰も成し遂げていない夢の技術なのです!
実験室ではなく、工業的に成立するプロセスを見つけられなければ、夢で終わってしまいます。


必須化学資源の低環境負荷生産 東京工業大学応用セラミックス研究所教授 原亨和(2015年3月16日 YOMIURI ONLINE 読売新聞)
サイエンスとテクノロジーの目的は、大きく三つに分かれる。一つは、真理を知るため。二つ目はよりよい生活のため。最後は、生き残る
ため。私はこの最後の目的のために研究している。生き残るために-番簡単なのは、無限のクリーンエネルギーを手に入れることだ。
私個人は、核融合が成功するなら最も素晴らしいと思う。だが、なかなか難しいのが現状だ。できるだけ化石資源の使用を減らすことが
必要だ。私の仕事は新しい触媒を作って、より少ないエネルギーで化学資源を生産することだ。良い触媒を生み出せば不可能も可能になる。
触媒は、化学反応の速度を早めて、進まなかった反応を可能にする。水素と酸素は2対1の割合で水になる。水素と酸素の混ざった気体に
着火すると、爆発し、水になる。だが、缶につめておくだけでは水にならない。缶を100度、200度に温めても変わらない。ところが、
金属の銅と酸素で酸化銅にする反応は、100度ぐらいで起きる。酸化銅を水素で還元して水を作る反応も、100度から200度で
できる。この場合、銅は触媒として働いたといえる。水素と酸素から水を作るには、火花に相当するエネルギーを与えてやる必要がある。
これを活性化エネルギーというが、このエネルギーの山は高い。だが、銅を使う方法は、乗り越えるのが簡単な山を2つあわせることで
反応を進めている。これが触媒の基本的な考え方だ。良い触媒を生み出せば、不可能も可能になる。
アンモニアの生産の話をしたい。中高生にアンモニアの研究の話をすると、眉をひそめられる。アンモニアは良いイメージがない代表格
だが、年間2億トンもの量が作られている。ポリエチレンが7000万トン、ポリエステルで2000万トンが1年間で生産されており、
アンモニアの生産量は桁違いだ。アンモニアは窒素肥料の生産に使われるからだ。20世紀初頭、「ハーバー・ボッシュ法」と呼ばれる
化学反応が考案され、アンモニアの大量生産が可能になった。アンモニアの大量生産で、窒素肥料の生産も増えた。窒素肥料は余剰食糧
を生み、世界の人口は15億人から70億人に増えた。20世紀以降の社会や科学技術の発達の背景には、アンモニアの大量生産がある。
アンモニアの大量生産がなければ、生活の大半を食糧獲得に費やさなければならず、今の私たちの大半は存在していないだろう。
アンモニアは極めてひねくれた反応をする。反応速度は普通、温度を高くすれば高くなるが、アンモニアは温度を高くすると逆に戻って
しまう。1000度ぐらいで全くできなくなってしまう。可能な限り低い温度で効率的に窒素と水素を反応させる必要がある。ところが
厄介なのは、窒素が非常に安定していることだ。窒素分子の窒素原子は、互いに強い力でつながっている。アンモニアの生産には、まず
窒素原子を引き離す必要があるが、それを初めて実現したのがハーバー・ボッシュ法だ。ハーバー・ボッシュ法は、鉄を主体とする触媒
で、窒素分子を窒素原子に分解し、水素原子と反応させる。しかし、反応を進めるには400~600度、200~1000気圧という
高温・高圧の状態にする必要がある。この化学反応で消費されるエネルギーの大きさは、人類が消費するエネルギー全体の2%にも
なる。アンモニアの合成に、初期投資のエネルギーが膨大になる。分厚い鉄管、大きいプラントが必要だ。人口が増加の一途をたどり、
エネルギー消費が加速することを考えると、少ないエネルギーでより多くのアンモニアを生産することが急務だ。こうした問題を解決
しようと、東京工業大応用セラミックス研究所では、少ないエネルギーでアンモニアを合成できる新たな触媒の開発に成功した。この
触媒はセメントの-種「エレクトライド」だ。材料科学と化学という異分野の研究グループが協力して得られた成果だ。電子を取り
込んだセメントというべきこの触媒は、ハーバー・ボッシュ法より低温・低圧の300度、1気圧でも10倍以上の速さで反応が進む。
エネルギーの消費量は10分の1ほどで済む。(後略)



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龍女「みなみ」からあなたへの
不思議なメッセージ集
新感覚のファンタジー!!

書籍表紙

不思議の国の「みなみ」
 宇宙へつながる秘密基地

「みなみ」 今月のメッセージ

中央構造線は、
わたしたち赤龍の国と
日本海にいる黒龍の国との
境界線といえるでしょう。

プロフィール

舞尾 空

Author:舞尾 空
・性別:男
・年齢:46歳
・職業:サラリーマン
・血液型:O型

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