自由からの逃走


若者はなぜイスラム国を目指すのか…池内恵氏インタビュー (2月4日 YOMIURI ONLINE)
自由から逃走する若者たち
(前略)さらにいえば、これは移民に限らないことだが、近代自由主義の中で生きる人間に固有の問題が現れて
いるのだと思う。どういうことかというと、西欧社会では「自分が何をなすべきか」は自由意思に任されている。
逆に言えば絶対に正しい答えというものはなく、自ら判断しなければならない。そのような自由は時として
重荷になってしまう。ところが、何か権威あるものに従うことにすれば、自分で決めなくても良い。
自ら判断する自由を捨ててナチスドイツの台頭を許した人々の心理を分析した社会心理学者、
エーリヒ・フロムの言葉でいえば、彼らは「自由からの逃走」を図ろうとする。
ましてやイスラム教の「神の啓示」は、なすべきことを全部教えてくれる。
先進諸国からイスラム国を目指す若者が出ているのは、このような理由があるからではないだろうか。
日本でも昨年秋、北大を休学中の若者がイスラム国への参加を企てるという事件があったが、
ここでも同様な心理が働いていたような気がする。かつてオウム真理教に集まった人たちもそうだったと
思うが、先進自由諸国では、このようにして「自由からの逃走」に走ってしまう人がある程度出るのは
どうしても避けがたい。そこは冷静に受けとめるべきではないか、という気がしている。
誤解に満ちた日本での議論
ただ、ちょっと気がかりなのは、日本では、「イスラム国の伸長は欧米の側に原因がある」といった
議論がしばしば見受けられることだ。例えば、一部メディアでは、西欧・米国への移民からイスラム国への
参加者が出るのは「彼らが差別されたり貧困に苦しめられたりしているため」といった解説もなされている
ようだが、これは事実誤認だ。ヨーロッパからイスラム国入りした人々について調べてみると、
その多くは欧米社会でそれなりの学歴を得た、比較的生活水準の高い層から出ている。
動機としては、差別や貧困よりも、先に述べた「自由からの逃走」が圧倒的に強い。
「中東混迷の原因は、第1次大戦中の1916年に英仏露が結んだサイクス・ピコ協定にある」といった
議論もしばしば耳にする。サイクス・ピコ協定とは、中東を支配していたオスマン帝国の領域を分割して
自らの勢力圏に組み込むために英仏露が結んだ秘密協定で、その時に恣意的に引かれた境界線が
今の中東諸国の国境の一つの起源になった。
これは欧米に非があるという主張の根拠としてしばしば用いられてきた。イスラム国もこの論理を踏襲している。
しかし今サイクス・ピコ協定を否定してしまえば、極端な話、「オスマン帝国の版図を復活させろ」ということ
になり、トルコ以外の誰も認めないだろうし、中東全域に戦乱が起きてしまう。これはあまりにも無責任な議論だ。
確かに「反欧米」という議論は日本などでも一般に受け入れられやすいのだが、中東の混乱の根本原因は、
圧政や抑圧、社会に充満する不正義の感覚といった、イスラム社会が自ら解消しなければならない問題だ。
欧米悪玉論はそうした実情を覆い隠してしまう。


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池内 恵

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今回のようなショッキングな出来事があったとき、「誰かが悪い」という意見がよく登場します。
「イスラム国が悪い」・・・正しいです。しかし、残念ながら、警察が逮捕してくれることはなさそうです。
次に予想されるのが、危険地域に入った被害者を責めるというものです。
「自己責任」という言葉は、そのような言いかたをされるとなかなか反論しにくいだけに恐ろしい言葉です。
「自己責任」という言葉を使う人は、何があっても「それは自己責任だ」という発想に陥ってしまうでしょう。
母子家庭・・・自己責任、ワーキングプア・・・自己責任、精神疾患・・・自己責任。
これは議論が正しいのか間違っているのかという問題ではなく、発言者の人間性の問題です。
どのような人にも表現の自由がありますから思ったことを言えばいいのですが、「自己責任」という言葉は、
「他人を責めることで自分を慰めている」と考えると納得できます。
ただし、金融取引は別です。「お前の言うことを信じて株を買ったら損をした。どうにかしろ!」
と言われれば、「それは自己責任です」と答えるしかありません。
住宅ローンについてはこれまで何度か書いてきましたが、これは「自己責任」です。

話を戻しまして、イスラム国ができたことは欧米の責任であると言う人がいます。
これもつまらない議論です。多くの国際問題は、「アメリカは悪い」といえば、話を終わらすことが可能です。
アメリカは世界のどこにも強い影響を及ぼしています。そのなかには、正の影響をあれば、負のものも
ありますから、悪いものばかり意図的に集めれば、「アメリカが悪い論」はすぐに成立します。
「アメリカが悪い」という結論を出してしまうと、そこで議論が終わります。
「総理大臣が悪い」という意見も似ています。
社会に全く貢献していない人でも、優越感を持って、「安倍が悪い」と言います。
総理大臣も人間ですから、いいところもあれば、悪いところもあるでしょう。
「少なくとも、安倍さんはあなたよりは頑張っていると思いますけど・・・」ってことです。
勿論、権力に対するチェックを怠ってはなりませんが、一定の敬意は持つべきでしょう。
政権がしていることより、何があっても、「自己責任だ」「アメリカが悪い」「総理大臣が悪い」と
言っておけばOKであるような思想体質のほうが、日本にとって深刻な問題です。
善悪論をしている限り、問題の本質は見えません。

その点、世界じゅうの若者がイスラム国を目指す理由として、「自由からの逃走」を挙げている、
上の引用文は傾聴に値します。「自由」はとても大事なことですが、
「自由だから幸せか」というとそうでもないのです。
個人が自由であるということは、みんなと同じことをしていても安心できないこと意味をしています。
バブル崩壊後の日本社会ではこの傾向が強まっています。孤独で不安な社会なのです。

イスラム社会がどんな社会であるのかを知らないので、想像でしかありませんが、
イスラム社会に限らずアジアやアフリカの多くの諸国では、宗教や部族という権威による絆によって、
教会や階級や生まれ故郷と強く結ばれているのではないでしょうか?連帯感は安心感を生み出します。
一言で言うと、「人に言われたように生きていけばいい」のです。
「お前って、本当に無能で、役に立たない人間だな!」と言われることのない社会に憧れを持つ気持ちは、
多かれ少なかれ誰でも持っているのではないでしょうか?
残念ながら、わたしたちは不自由な社会に戻ることはできません。これは運命的なものであるといえます。
自由は試練であると思っていたほうが、困難に立ち向かう勇気がわいてくるように思います。


自由からの逃走
<出典> 誠 Biz.ID > 藤沢烈の3秒で読めるブックレビュー:『自由からの逃走』


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Author:舞尾 空
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・職業:サラリーマン
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