里山資本主義というユートピア


「里山資本主義」では持続可能な社会を作れない (8月8日 WEDGE Infinity)
オーストリアと日本の最大の違いは、エネルギー消費量だ。日本とオーストリアのエネルギー
供給量とその内訳を表に示した。(表は省略)オーストリアの消費量は日本の7%。
そのうち、バイオマスの比率は20%。条件に恵まれているオーストリアでもこの程度だ。
「21世紀先進国はオーストリア、ユーロ危機と無縁だった国の秘密」と『里山資本主義』が
持ちあげるオーストリアの林業の付加価値額は11億7000万ユーロ、オーストリアのGDP、
3107億ユーロに占める比率は0.4%、雇用者数は、林業で7300名、関連産業で14900名だ。
オーストリアの雇用者数373万の1%にも満たない。木質バイオマスで地域の産業を活性化し、
雇用を作り出すというのは夢物語に近い。(中略)
日本で需要が落ち込みデフレになったのは、多くの働く人が一人当たり付加価値額の
相対的に高い製造業から、相対的に付加価値額が低い医療・福祉の分野に移動したからだ。
要は平均給与の減少に輪をかけて、給与の高い人が減り、給与の低い人が増えたので消費
も不振になった。図-1は日本の産業別労働人口の変化を、図‐2は業種別の給与を示している。
(図1は省略)製造業、建設業から医療・福祉に約300万人の移動があるが、この300万人の人達
の給与は大きく下落している。消費も落ち込むわけだ。デフレの正体は産業構造の変化に伴う、
付加価値額、即ちGDPの減少、給与の減少、消費の落ち込みだ。(中略)
経済活動には、環境問題、雇用、競争、様々な問題が伴う。その問題にすべての先進国は
真正面から取り組んでいる。日本だけ、競争は嫌だから里山で生きますと言えば、多くの国民は
不幸になるだろう。我々が将来世代を考え持続可能な社会を作り上げるためには、多くの課題に
取り組み解決する必要があることをよく自覚すべきだ。理想、目標を掲げることは必要かもしれない。
しかし、本当に安心な社会を作ることから逃げることはできない。
業種別平均給与

日本では、どうやって国民が高付加価値な仕事をしていくかが大きな課題になるのですが、
エネルギーの生産は、生産物のなかで最も付加価値の低い産業に該当します。
農作物なら付加価値を高める努力が可能ですが、エネルギーにおいては、生産量を増やしてコストを
下げるしかありませんので、日本で最も適していない産業です。
ただ原子力だけはこれに該当しませんので、魔の力に頼ろうという気持ちになってしまうわけです。
はっきり言って、里山で生きていけるのは、多くても日本人の1%もいかないでしょう。
バイオマスは太陽光とは違い、無限の資源ではないことも、注意しなければならない点です。
バイオマスで自給自足を行うためには、バイオマスの消費量が森林の成長速度を超えないように
しなければいけません。そうでないと、日本の山がはげ山になってしまいます。
バイオマスで持続可能な社会を目指すのであれば、江戸時代のように人口を3000万人くらいにして、
一人当たりのエネルギー消費量も江戸時代並にしなければなりません。
多くの文明が、森林を失うことで滅んでいったのです。

バイオマスというとどうも響きがいいようで、バイオマスの研究は今でも盛んに行われていますが、
多くの研究において、根本的に方向性が間違っているように思います。
間伐材を燃やして発電することは悪いことではありませんが、特に付加価値を生むものではありません。
小規模なバイオマス発電では発電効率が悪くなるし、規模を大きくしようすれば、遠隔地や採集困難な
場所から間伐材を集めて来なければなりません。バイオマス発電をするのに、遠いところから、軽油を
使ってトラックで木材を運んできて、何の意味があるのでしょうか?せめて、鉄道にするべきです。
また、バイオマス発電所ではなく、石炭火力発電所での混焼で十分だと思われます。どちらにしても、
燃料としてのバイオマスは、地方創生とは無関係です。

他にもおかしな試みがたくさんあります。その典型的な例が、木質バイオマスのエタノール化です。
アメリカのように、トウモロコシからなら、エタノール生産はそれほど困難ではありませんが、
一般に、バイオマスをエタノールにするのは容易ではありません。コストをかけていいのは、
付加価値のある商品をつくりだす場合に限られます。バイオマス由来の高いエタノールを買ってくれる人
はいないのですから、補助金を出し続けないと価格が合いません。ですから、
サトウキビの殻のように発酵が容易なものに限るべきであり、リグニンのある木質系はコストが合いません。
稲わらのようなソフトバイオマスについては、木質バイオマスのように絶対無理ではなく、
毎年多量に生産されるものであるだけに、研究する価値はあるでしょう(例えば、 『稲わらを
材料にした高効率バイオエタノール製造技術の開発』 5月30日 大成建設)。このように、
非作物系バイオエタノールの可能性については否定はしませんが、木質は無理です。

期待できるとすれば、付加価値のある素材関連ということになり、その代表はセルロースナノファイバー
でしょうか。不織布やシートでの利用は、ある程度実用化が可能なように思われます。
問題は樹脂への複合化技術です。セルロース繊維の表面にある水酸基を何かで修飾してしまえば、
樹脂への分散は可能になるでしょうが、それでは、変性に多くのコストがかかりますし、水素結合で
結びつくことにより高強度が得られるセルロースナノファイバーの特性を弱めることになります。
表面修飾を行わず、水に分散した状態のセルロースナノファイバーを、樹脂に均一に分散させて
強度を発現させることができれば、イノベーションになるかもしれません。
しかし、現在のところ、水素結合のコントロールには成功しておらず、実用化できるかは不明です。
このようにセルロース産業については成功の可能性がありますが、原料はパルプですので、
製紙業の延長として位置づけるべきであり、里山とは何の関係もありません。
セルロースナノファイバーが、CFRP(炭素繊維強化プラスチック )にも負けない新素材になり、
この分野で、日本の企業が競争力優位を持つ可能性もないわけではありませんが、
日本の林業を活性化させることはあり得ません。

「グローバル経済からの解放」を目指すことも、「マネー資本主義」を変えていかなければならない
ことも賛成です。しかし、いくら里山が素晴らしくても、これは資本主義にはのりません。
都会暮らしの人にとっては、郷愁のようなものから共感するところがあるのかもしれませんが、
田舎暮らしの人間から見れば、里山資本主義はナンセンスです。
マクロ経済としては、東京一極集中による付加価値の高い産業の創出こそが日本の生きる道
であり、それを否定すれば、都会も田舎も共倒れになってしまいます。残念ながら。
都会暮らしの皆さま。日本のことを思うのでしたら、
高い給料をとって、いいものを買ってください。


里山資本主義  日本経済は「安心の原理」で動く (角川oneテーマ21)里山資本主義 日本経済は「安心の原理」で動く (角川oneテーマ21)
(2013/07/10)
藻谷 浩介、NHK広島取材班 他

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書籍の紹介

龍女「みなみ」からあなたへの
不思議なメッセージ集
新感覚のファンタジー!!

書籍表紙

不思議の国の「みなみ」
 宇宙へつながる秘密基地

「みなみ」 今月のメッセージ

中央構造線は、
わたしたち赤龍の国と
日本海にいる黒龍の国との
境界線といえるでしょう。

プロフィール

舞尾 空

Author:舞尾 空
・性別:男
・年齢:46歳
・職業:サラリーマン
・血液型:O型

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