サイエンスの対義語としてのアート


構造設計におけるアートとサイエンス (吉見吉昭のホームページ > 防災と建築構造)
アートなる英語は,狭い意味では美術を指しますが,広い意味では,あることを成し遂げる能力
としての,技術・技芸全般を含むようです。
一方,サイエンスのほうは,自然科学に限らず,体系化された知識のことを意味します。
両者を対比させるときは,サイエンスが理論的に明確にされているものを指すのに対して,
アートは,必ずしも理論的に割り切れない部分,すなわち経験に裏づけされた判断を含むという
違いがあるように思います。構造技術の分野に当てはめれば,構造力学・材料力学・振動論を
サイエンスとすれば,構造計画・構造設計はアートだと言えるでしょう。
構造設計の基礎となる構造解析については,昔は,ちょっと複雑な構造物になると,正攻法では
歯が立たないので,解析可能な近似モデルに大幅な単純化を行う必要がありました。
そのような工夫をする過程は,経験と判断を必要とするアートであったと思います。今は,高速デジタル
コンピューターの御蔭で,かなり複雑な構造物でも,いわば力ずくで解析できるようになりました。
つまり,構造解析の中では,サイエンスの占める部分が大きくなってきたようにみえます。
しかし,構造設計については,外力の設定,構造物のモデル化などに,アートに頼る余地がありますし,
構造計画となると,なおさらでしょう。
近年非常に進歩したものの一つにカメラがあります。自動露出から始まって,自動焦点,
自動フラッシュ,自動フィルム巻取り機能などを備えたものです。御蔭で,手ぶれにさえ気をつければ,
エキスパートでなくても失敗なく写真が撮れるようになりました。それを可能にしたのは先端技術ですが,
相手が光という,正体のはっきりした物理現象だから,サイエンスで処理できる部分が多く,
そのために自動化がうまく行くとも言えます。しかし,被写体を選び,どのように光をあてて写真を
とるかを決めるのは人間の仕事です。露出やピントのことを心配せずに,創造的な作業に
集中することによって,アートとしての価値の高い作品を産み出すことができます。
いわば,カメラと人間の間でサイエンスとアートの分業が行われるわけです。

求人倍率

上の引用文はちょっと専門的なお話ですが、アートとサイエンスの違いについて非常に分かりやすい
説明をされているように思います。一般的には、アートは芸術で、サイエンスは科学と理解されていて、
全く別次元のものとして考えられていますが、この2つは「陰陽」として考えるべきものです。
科学的に解明されている事象は、科学的手法に従えば、同じことを再現することができます。
しかし、現実には、科学技術では取り扱えないものも数多く存在していて、アートが必要になります。

アートとサイエンスには境界がありますが、サイエンスは常にアートの領域を浸食しているのです。
人に頼らないとできなかったものを機械やコンピュータにさせることで、人手に頼った作業は減り、
大量で正確な処理が可能になりコスト削減につながります。サイエンスが可能になった分野では
アート(ここでは人手)が不要になるので、そういった仕事の採用がなくなっていくのです。
現在、最も、アートがサイエンスに置き換わっている分野は、事務作業です。逆に、事務作業を
減らすサイエンス(技術開発)に携わっているIT関連の技術者のほうは人手が足りません。
事務の仕事については、今後もアートがサイエンスに置き換わっていくと考えられ、さらに
事務の仕事は必要なくなっていくでしょう。求人倍率が上がって、雇われるほうにとっては
雇用環境が改善してきているのですが、いわゆる「事務」を希望する就職希望者は依然多く
(上に示しているのは、転職に関するものですが)、
雇用のミスマッチが拡大しています。
昔から「手に職をつけろ」と言われますが、アートをサイエンスに変える仕事はこれからも
必要とされるので、「よい職」といえるでしょう。
テクノロジーには、サイエンスとアートの両面があるのですが、デジタル技術には、
職人技の部分が少なく簡単に模倣が可能であり、それが日本メーカーの苦戦の原因になっています。
特に、部品間の「すり合わせ」が必要ないものでは、日本は勝てなくなってきているのです。
「手に職をつける」なら、将来にわたってサイエンスに浸食されそうもないアートを身につけておかないと、
苦労して習得した技が無駄になり、失業という可能性もあります。

では、アートの領域はどんどん減っていくのかというと、そうではありません。
逆に、サイエンスで可能だと思われていたものに、アートが浸食しているのです。
記事28-5で紹介しました『型を破る人の時代』を読んでもらえば分かりますが、
人々(発展途上国ではそうでもないと思いますが)が「モノ」に価値を見出さなくなってきており、
「心に触れるもの」のほうが価値を持つようになってきたのです。
「心に触れるもの」は全くサイエンスにならないというわけではないのですが、
「心に触れるもの」の多くは、「斬新なもの」であり、アートからはじめるしかありません。
大量生産して大量消費してもらえないものならば、サイエンスしても利益につながりません。
今までなかったもの、人が気づかなかったものを提供するのは主にアートの仕事です。
デジタル化が進めば進むほど、アートの重要性は増していくでしょう。

今後、最も期待されるのは、アートとサイエンスの融合です。
サイエンスの進歩によって新たに生まれるアートの分野は、過去の人がしようと思っても
できなかったことであり、将来性の高い分野になります。例えば、
サイエンス&アートにより、現実よりリアリティの高い
バーチャルの世界が創造されるでしょう。

アートとサイエンスが融合した分野として、わたしが思いつくのは、「経営」と「医療」です。
「経営」に必ずサイエンスが必要かというと?ですが、「医療」にはサイエンスが必須です。
かといって、「医療」のすべてがサイエンスで理解できるものでもありません。
これからも、医療はアートとサイエンスが融合した最先端領域であり続けるでしょう。
医療従事者がより重要な仕事に専念できるように、医療従事者の負担を軽減してあげる、
つまり、医療分野のアートをサイエンスに変える技術開発はさらに必要とされるでしょう。

診断戦略: 診断力向上のためのアートとサイエンス診断戦略: 診断力向上のためのアートとサイエンス
(2014/04/11)
志水 太郎

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書籍の紹介

龍女「みなみ」からあなたへの
不思議なメッセージ集
新感覚のファンタジー!!

書籍表紙

不思議の国の「みなみ」
 宇宙へつながる秘密基地

「みなみ」 今月のメッセージ

神津島の天上山は、
神が集う島のなかでも、
特に神の集まるところ。

プロフィール

舞尾 空

Author:舞尾 空
・性別:男
・年齢:46歳
・職業:サラリーマン
・血液型:O型

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